こんにちは。
そうじで組織と人を磨く、日本で唯一の研修会社 株式会社そうじの力
代表取締役・組織変革プロデューサーの小早祥一郎です。
支援先の、特に社長に対し、私は「社内の”聖域”をなくしましょう」と呼びかけます。
なぜ聖域はない方がいいのでしょうか?
聖域がなくなると、どんな良いことがあるのでしょうか?
今回は、そうじをして聖域をなくすことで、組織を良くする方法について解説していきます。
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目次
社長室を聖域にすることで生まれる2つのデメリット
会社の中の聖域というと、真っ先に思い浮かぶのが、社長室です。
あなたの会社では、「社長の椅子」はどこにあるでしょうか?
独立した社長室でしょうか?
あるいは、大部屋に、社員の皆さんと一緒に座っているでしょうか?
社員さんたちが社長に話しかけたいとき、すぐに向き合える位置関係にあるでしょうか?
そして社長室も例外なく、環境整備できているでしょうか?
「自分以外の誰も入れない、独立した場所」があることで、邪魔されずじっくり物事を考えることができます。
しかし、そんな聖域があることによるデメリットも存在します。
①壁で仕切られると、「近寄りがたい存在」になる
ある会社では、当初社長は、大部屋の隅に、パーテーションで仕切ったエリアに籠っていました。
この状況について、社長に聞いてみたことがあります。
なぜわざわざ、こうしてパーテーションで仕切っているのですか?
社員に見られたら困る書類もあるし、急に銀行さんが来られても困るので…
しかし、社員さんに見られて困るような書類は、そう多くはないでしょう。
銀行さんが急に来られても、煩わしいということはあるでしょうが、特段困ることもないはずです。
仕切られたエリアがないといけない、というのは、多分に社長の先入観だと思うのです。
こうした状況で引き起こされるのは、社員さんたちが社長にアクセスしにくい、ということです。
ただでさえ、経営者と社員は立場が違うので、近寄りがたいのです。
こうして壁で仕切ってしまうことで、余計に近づきにくくなってしまいます。
危惧すべきは、そうしたことが、お互いの信頼感の醸成を阻害しかねない、ということです。
②聖域をつくることで、社員からの信頼が得られない
別の会社の事例では、社長室が、社員の事務所とは別の階にありました。
全社で”そうじ”の活動を進める中で、社長室の状況が問題になりました。
はっきり言って、社長室が汚いのです。
社長は整理・整頓が苦手な人で、デスクには書類が山積みになっており、床にもいろいろなものが散乱していました。
私は、何度も社長に整理・整頓するように促しました。
また、社員さんと一緒になって整理・整頓すると、本人だけでやるよりも進む、というアドバイスもしました。
しかし、社長は自分でやろうとしません。
社員は出入りしてほしくない、ということで、社員を入れることもしません。
この会社では事実上、社長室が「聖域」になってしまっているのです。
社員に対しては、「そうじをしてキレイにしなさい」と説いているにもかかわらず、社長ご自身は、社長室を閉じている。
これでは、社員さんたちの信頼が得られないのは当然です。
残念ながらこの会社では、”そうじ”の活動が途中で頓挫してしまいました。
誰かの「特権」を認めると、組織全体が「自分勝手」な風土になっていく
社長室に限らず、会社内に、立ち入りがはばかられる場所があることは珍しくありません。
会長(先代)が関わるエリアだったり、古参社員の持ち場だったり・・・・・。
でも、会社というのは組織です。
それぞれが何らかの関わりを持ち、一人ではできないことを、皆で実現していく共同体です。
そこにアンタッチャブルなゾーンがあると、それだけで組織の「和」が崩れてしまいます。
もちろん、金庫であるとか人事情報のファイルであるとか、一般社員がアクセスできないものもあるでしょう。
でも、そういったものは、ほんの一部のはずです。
諜報機関に属する工作員たちが、それぞれの情報を同僚にも漏らさない、というような状況であれば話は別ですが(笑)、私たち一般企業において、お互いに触れてはいけないことなど、ほとんどないはずです。
あるとすれば、それは本人だけが持っている役に立たない「こだわり」です。
タブーの存在は、組織内に無用な緊張感を生み出します。
そしてひとつ聖域ができると、知らないうちにどんどんそのようなエリアが生まれていきます。
こうして、誰かの「特権」を認めてしまうことで、組織全体に「自分勝手」な風土が拡がってしまうのです。
聖域をなくして環境整備が進んだ好事例
私自身、社長なので、社長という人種の特徴はよくわかります。
自分の弱みや不都合を、他人に見せたくないのです。
山積みになったデスクは、見せたくないものの典型です。
また立場として、トップから社員に指示を出すのが社長。
「人には言うけれど、自分は全然できていない」と思われるのも避けたいのです。
だから、「見られては困る大事な書類があるから」とかなんとか言い訳を並べて、見られるのを拒否したいわけです。
でも、だからこそ、「社長が先頭に立って取り組む」ことには大きな効果があります。
①「社長の本気度」が社員に伝わり、環境整備が進んでいった!
さきほどご紹介した、パーテーションで囲われた社長室。
環境整備活動を進める中で、あるとき社長がパーテーションを取り払う決断をしてくれました。
実はこの会社においては、この社長室のパーテーションを取り払ったことが、その後の環境整備活動が加速するキッカケになったのです。
「あそこで社長が自分のこだわりを捨ててくれたおかげで、社員も社長の本気度を感じて、やる気にスイッチが入った」とのこと。
社員それぞれのデスクの間にも、パーテーションがありました。
「社長がパーテーションを外したのだから」ということで、取り払ってみることにしました。
すると、当初は、
「向かいの社員の顔が見えて、なんだか気恥ずかしい」
という声もありましたが、すぐに
「このほうがお互いに会話がしやすく、必要な情報交換がスムーズにできる」
という声が大勢を占めるようになりました。
部屋が閉じられていたり、パーテーションで区切られていたりすると、その物理的な壁が心理的な壁を作ります。
物理的な壁取り払われたことで、心理的な壁もなくなったのです。
この会社では、その後キャビネの扉を取り払ったりと、さらにオープンにしていく試みを続けています。
②社員からの小さな相談事や細かな報告・確認が増えた!
ある会社では、当初、社長室が2Fにありました。
社員さんたちは1Fの大部屋にいます。
社長ご自身も、2Fではなく1Fに移ることを希望していたのですが、1Fにスペースがない、という理由でできませんでした。
そこで、1Fの不要物を捨て、整理を進めることでスペースを作り、そこに社長のデスクを移しました。
すると、社長いわく、「社員とのコミュニケーションが各段に良くなりました」とのこと。
小さな相談事や細かな報告・確認が抜群にされやすくなったのです。
③社員から「こうしたい」という要望・希望が出てくるようになった!
こちらはまた別の会社の社長デスク。
当初は書類の山で覆われており、机の周りにもいろいろなモノがあふれ、まさに「足の踏み場もない」という状況でした。
別に壁があるわけではありませんが、これでは社員さんも、うかつに社長に近づけません。
ヘタに近づいて書類の山に触ったら、雪崩が起きてしまうからです。
その社長のデスクを、整理・整頓してキレイにしてもらいました。
すると、社員さんたちが、気軽に社長にアクセスできるようになりました。
この会社では、”そうじ”の委員会が、定期的に社内の巡回チェックを行っています。
そのチェック対象に、社長のデスクも含まれることとなりました。
もちろん社長は立ち合いますが、あくまで「チェックされる側」です。
この会社では、社長が”そうじ”の委員会に「一委員」として加わることで、社長と社員の心理的な壁がぐっと低くなりました。
結果、社員から「こんなことをしてみたい」という希望や要望が、社長にどんどん届くようになったのです。
環境と人の心は連動する
なぜ”そうじ”の活動で社長室を廃止したり、パーテーションを取り払ったりするのかというと、単純に、
「囲われた空間は、乱れやすく汚れやすいから」
という理由があります。
パーテーションで囲われていると、その中が治外法権になり、書類が山積みになったり、私物や不要物が溜まったりします。
パーテーションがあると、隅や奥に手が届きにくく、掃き掃除や拭き掃除もしにくいです。
だから、できるだけオープンにすることで、空間をキレイにしやすくなるのです。
そして副次的な効果として、空間がキレイになるだけでなく、そこに集う人の心も、互いに「オープン」になる効果があるのです。
まとめ
物理的な聖域が存在するということは、そこに必ず心理的なタブーも存在します。
心理的な問題を解決するのは、とても難しいです。
それこそ、心理カウンセラーや専門家の領域かもしれません。
でも実は、物理的に手を打つことで、解決できることもあるのです。
”そうじ”は、聖域をなくし、オープンな社風を作る活動なのです。
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