5Sに取り組んでいるのにあなたの会社が変わらない10の理由 その1「社長がやらない」

こんにちは。
そうじで組織と人を磨く、日本で唯一の研修会社 株式会社そうじの力
代表取締役・組織変革プロデューサーの小早祥一郎です。

世の中、「5S」「環境整備」などに活動に取り組んでいる会社は、決して少なくありません。
しかしながら、そのすべてが「期待するような効果」を上げているわけではないようです。

「やってみたけれど、うまくいかなかった」
「一過性で終わってしまった」
「続けてはいるけれど、マンネリ化してしまっている」

「期待するような効果」を上げられない理由は、一体何なのでしょうか?
その理由を解き明かすのが、本シリーズコラム。
全10回にわたってお伝えしていきます。

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そうじは「社員の仕事」? いいえ、社長をはじめ「全員の仕事」です。

ウチの会社は5S活動に力を入れている、という社長さん。
でも、社長室に入ってみると、デスクには書類の山。
足下にもたくさんの荷物。壁にはたくさんの貼紙。
書棚には書類やら書籍やらが、横になったり逆さになったりして棚から転げ落ちそうです。

「そうじ(5S活動、環境整備)は、社員がやるものであって、社長がやるものではない」
と考えている社長は多いです。
どうしてでしょうか?

「教育」として「やらせたい」社長

そうじには様々な効果があります。
安全性の向上、生産性の向上、快適性の向上、そしてコミュニケーションの活発化…。
だからこそ、「教育」として社員さんたちにやらせたいのでしょう。

でも、ちょっと考えてみてください。
「整理整頓しなさい」と言う社長の身の回りがそんな状態であったら、説得力はあまりないですよね。
言われた社員さんたちは、社長命令であれば、まあ取り組みはします。
でもそこには「言われているからやる」以上のモチベーションは生まれないでしょう。

ですので、社長も多いにやるべきです。
「自分が一番やっているぞ!」くらいの気概で取り組むべきです。

経営者と社員のやるべき事は違う?

「いや、経営者と社員のやるべき仕事は違う」
そんな反論が聞こえてきそうです。

普段の業務においては、確かに経営者と社員の役割は違います。
でも、「社内を整える」ということに関しては、経営者と一般社員の役割の違いなんかありません。
経営者だから高度なそうじができるとか、ありませんよね(笑)。

会社は、社長・社員全員が関わる「家」であり、プラットフォームです。
家のそうじは誰の仕事でしょうか?
奥さんの仕事?とんでもない!家に住む全員がやるべき仕事ですよね。

社長が取り組む「意義」とは

そもそも、そうじって面倒くさいものです。
そして、健康な体があり、基本的な生活スキルが身についていれば、誰でもできてしまうことです。
多くの人が、「面倒」で「自分でなくてもできる」ことは、できればしたくないと考えます。

でも、だからこそ、社長がやることに意義があります。
社長がそうじに取り組むからこそ、社員に伝える「目的」「意義」「効果」「目標」に説得力が生まれるのです。

企業は、社長がすべてです。
社員は、社長の「行動」を見ています

率先垂範?背中を見せる? 社長、それは「やっている」ことにはなりません。

下心は見透かされる

「小早さん、僕はそうじしているんですよ。」
という社長さん。
聞いてみると、毎朝、一人でトイレそうじをされているようです。

「でも、誰も手伝おうとしないんですよ」
と不満げなお顔です。

「どうして一人でトイレそうじをなさっているのですか?」
と問うと、
「だって、トップたるもの、率先垂範が大事じゃないですか。ほら、よく『背中を見せろ』っていうでしょ」
との答えが返ってきました。

私は、率先垂範という言葉が嫌いです。

なぜならそこには、
「自分がやっている姿を社員に見せれば、社員はやるようになるだろう」
という魂胆が見えるからです。

加えて、いったん社員がやるようになれば、
「もう自分の役目は終わった」
とばかりに、社長自身がそうじをしなくなる、という例もたくさん見ました。

はっきり申し上げます。
その魂胆は、社員に伝わります。
だから社員が手伝おうとしないのです。

「やらせる」のではなく「一緒にやる」

大切なことは、社長と社員が一緒になってやることです。
社長が一人でやるのでなく、社員にやらせるのでもありません。

ある会社で、こんなことがありました。
私の研修中、講義やミーティングの場には同席する社長。
その後、工場内の現場を巡回したり、そうじの実習をしたりする際には、なぜか姿を消すのです。
その社長さんも、「私は一人でトイレそうじをしている」とおっしゃっていました。
毎朝朝礼で、5Sの大切さを説いていました。
でも、果たして社員さんたちにはどう映っていたでしょうか。

「社員と一緒にそうじをする」
というのは、
「社長と社員の間にある見えない壁を、社長自身が壊し、社員に歩み寄る
ということ
です。

朝礼や会議で、「5Sの大切さ」を100回繰り返して説くよりも、一緒に実践する方が、ずっと効果があるはずですよ。

同じ方を向き、ともに問題を解決していくことで、信頼関係が構築される

先ほどお伝えしたとおり、そうじは「誰にでもできる取り組み」です。
役職や肩書、経験や知識は関係ありません。
社長、部長、課長、係長、主任、一般社員、パート、アルバイト、新入社員…。
企業における仕事の中で、唯一、それら全員がフラットに活動できる取り組みです。

社長と社員が、そうじをして一緒に汗を流すことで、お互いの距離が縮まります。
「社長がこんなに一生懸命やってくれている」という信頼関係が生まれます

ある会社で研修の際、ドロドロに汚れた機械を、社長と新入社員とで、全身泥だらけになりながらそうじをしました。
「これはひどい汚れだね(笑)」
などという他愛もない社長の一言から、社長と新入社員の間にどんどん会話が生まれていきました。
普段はなかなか会話のない立ち位置の二人。
歳も親子ほど離れていますから、なかなか共通の話題もありません。
機械のそうじが、歩み寄るきっかけになったのです。

あるとき、その社長さんが
「最近、社員が僕に世間話をしてくれるようになりました」
と嬉しそうに笑って話してくれました。

その会社では、デスクの整理・整頓に関しては、社長も社員もありません。
定期的なチェックの際には、社員が社長のデスクについて、
「社長、もっと整理・整頓しましょう」
と指摘する場面もあります。

業務の中で、社員が社長に対してモノを申せる機会は、滅多にないことでしょう。
でも、そうじではそれができるのです。

「言いたいことが言える」
「やりたいことを『やりたい』と言える」
自主性のある社風は、こんなところから作られていくのではないでしょうか。

まとめ

そうじとは、単に「会社をキレイにする活動」ではありません。
私たちの定義するそうじとは、【本質を明らかにし、究めること】。
モノにアプローチしながら、実はそこにまつわるコトの問題をあぶり出すアプローチなのです。

社長が社員と一緒にそうじをすることで、様々な隠れた問題が表面化します。
問題が表面化するからこそ、課題設定ができ、解決する行動に取り組むことができる。

「期待する効果」を上げている企業は、社長も一緒に取り組んでいます。

5Sに取り組んでいるのにあなたの会社が変わらない10の理由」目次

その1 「社長がやらない」←本記事
その2 「組織を作らない」
その3 「時間を確保しない」
その4 「現場の取り組みだと思っている」
その5 「『モノ』へのアプローチにとどまっている」
その6 「リアクションがない」
その7 「目的を取り違えている」
その8 「経営計画書に明記していない」
その9 「楽しくやっていない」
その10 「社長が約束を守らない」

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