環境整備の目的設定が重要な2つの理由【そうじの力で組織風土改革】

こんにちは。
そうじで組織と人を磨く、日本で唯一の研修会社 株式会社そうじの力
代表取締役・組織変革プロデューサーの小早祥一郎です。

「効率を高めたい」「安全性を確保したい」
という目的で、5Sや環境整備を進めている会社は多いことでしょう。

中には、
「社内がごちゃごちゃしているので、とにかく見た目を良くしたい」
と「見た目を良くすること」を目的に環境整備を始めたいという考えもあるかもしれません。

ただ、私は
「会社を良くしたい(組織風土を変えたい)」
と思うのであれば、
「見た目を良くすること」
を目的の一つにすることは危ういと考えています。

なぜ見た目を良くすることを目的にしないほうがいいのでしょうか?
また、どんな目的設定をして取り組めばよいのでしょうか?

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「見た目を良くすること」が環境整備の目的になっていないか

目的がはっきりしないと、何が起こるのか

「そうじ(整理整頓)に取り組む目的が、社内にまだ浸透していない」支援先では、こんなシーンに出くわすことがあります。

たとえば、書類を収めているキャビネット。
そこに扉がついています。
私は、「その扉を取り払いませんか?」と投げかけます。
「扉がないほうが、中身がよく見えて、取り出すのも収納するのも楽ではないですか?」と。

しかし現場の人は、「扉がついていた方が見栄えがいいじゃないですか」と、扉を取ることに抵抗します。

あるいは、こんなこともあります。
製造業の現場で、「工具を整理・整頓しよう」ということになりました。
現場の人たちは、必要な工具を、一箇所にまとめて壁掛け方式で整頓しようと言います。

私が、
「しょっちゅう使うものは、手元に置場を作ったほうが良くないですか?」
と聞くと、現場の人たちは、
「だって、こうして全部を一箇所に集めて壁掛け式にしたほうがカッコいいじゃないですか」
と反論します。

現場では結構、こういうことが起こります。
なぜ起こるのかと言うと、「目的の認識が違っている」からです。

目的が違えば、起こすアクションも、得られる結果も違うものになる

会社の”そうじ”をする。

その目的が、
「キレイにする」
「見栄えを良くする」
であった場合、扉はあった方が良いかもしれません。

工具も壁にかかっていた方が格好が良いかもしれません。

ところが、これが、
「常に誰もが使いやすく戻しやすい状態にしておく」
が目的だとしたらどうでしょうか。

視点が全く変わることに気が付くはずです。

目的が違えば、起こすアクションも、そして得られる結果も全く違ってきます

「見た目を良くすること」を目的にすると、社風の変革は起こせない

こういうやり取りそのものが生まれることはとても良いことです。

なぜならば、この場面こそが、

  • 「会社が掲げる目的」と「自身の行動」を合致させる場
  • 各人の「気づき」が生まれる場
  • 価値観を露呈させ、方向性を合わせていく場

となるからです。

「目的と行動を合致させる」
「気づきの力を高める」
「社員の価値観を合わせていく」
これだけであれば、「見た目を良くすること」を目的としても問題がないように思えますよね。

ただ、私は「会社を良くしたい」と思うのであれば、「見た目を良くすること」を目的にしてしまうと、社風の変革はなしえないと考えています。

なぜ見た目を良くすることを目的にしないほうがいいのでしょうか?

「見た目を良くすること」を目的にしてはならない2つの理由

見た目を良くすることを目的とすると、以下の2つのことが起こります。

  1. 「表から見えるところのみキレイにする」という行動が行われる
  2. 人によって基準が違うため、活動の進歩・発展が困難

それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

①「表から見えるところのみキレイにする」という行動が行われる

表面だけキレイにすれば、一見すると整って見えます。
しかし、実は、見えない所にこそ、重要な問題点が隠されているのです。

見えない所には、「一時置き」や「仮置き」のものが置かれています。
見えない所に、「処理をしなければいけないのに、処理するのが面倒なもの」が積まれています。
見えない所に、不要物が溜まります。
見えない所に、ゴミやホコリ、汚れが溜まるのです。

これはどういう状態かというと、
「臭いものに蓋」
いつまで経っても、解決しなければ前に進めない『真の問題』が放置されたままの状態
です。

人の「欲」の習性として、

  • 損をしたくない
  • すぐに結果が欲しい
  • 努力をしたくない(ラクをしたい)

という3つのものがあります。

「表面だけキレイにする」というのは、実はとてもその「欲」と相性がいいのです。

  • 一見整ったように見えるように、すぐに結果が見える
  • やったことをアピールしやすく、人に評価してもらいやすい(やっても損をしない)
  • 問題のある深部にまで手を入れる必要がない

…。

これを続けていくことは、厳しい言い方をすれば、
『見えるところだけキレイにする』ことで、『その場しのぎ』の風土を作ってしまう
とも言えるでしょう。

「見えない所に手を入れる」のは、それらの全く逆の方法です。

時間はかかりますし、面倒ですし、外部の人からはおそらく見えません。
ですが、組織が抱える問題点が露わになります。
これらの問題の解決に取り組むことで、組織風土は確実に良くなっていきます。

また、上記でご紹介した事例のように、見栄えを優先することで、かえって仕事がしにくくなったり、生産性が落ちたりすることがあります。

会社を良くするために、そうじ(整理整頓)をしているのですから、それでは本末転倒ですね。

②人によって基準が違うため、活動の進歩・発展が困難

もう一つの問題点は、人によって「キレイ」の基準が違うため、活動を進歩・発展させていくことが困難だということ。

「見た目が良い」とか「キレイ」とかいうのは、主観です。

たとえば、Aさんにとっては「キレイだ」と思う環境が、Bさんにとっては「乱れている」と感じる環境かもしれません。

基準を同じくすることができないものを、進歩・発展させていくことは困難です。
進歩・発展させていけないものに、楽しみを見出すことはなかなか苦行です。
AさんもBさんも、お互いにストレスを抱えてしまう原因になるかもしれません。

「働きやすさ」を基準にする

では何を基準にして、会社の”そうじ”を進めるのといいのでしょうか。

私は、
その場に携わる人全員が、仕事をしやすくなる環境
チーム内の誰かが急に不在になってもカバーできる体制
を基準にするとよいと思います。

具体的には、

  • 誰でもどこに何があるか分かるようになっているか?
  • 仕事が早く楽にできる工夫があるか?
  • 誰にとっても安全か?
  • ミスを防げる工夫があるか?
  • 知見を皆で共有できるようになっているか?

といった観点ではないでしょうか。

そうじ(整理整頓)の目的は、

  • 各人が持てる力を発揮できるようにすること。 
  • 互いに気持ちよく仕事ができるようにすること。

です。

だから支援の場では、

  • モノの置場を整える際
  • 床を磨く際
  • ゴミを拾う際

など要所要所で、「会社の掲げる『”そうじ”の目的』に合致していますか?」と皆さんに問いかけます。

そうすると自然と、
「キャビネの扉は取り外した方が、どこに何があるのかが良く分かり、取り出しやすく、収納もしやすい」
「製造現場の工具は、すべてを一箇所に集めて壁掛け式にするよりも、しょっちゅう使うものは手元に置場を作った方が、仕事がしやすく生産性も上がり、ミスも少なくなる」
という結論に至るのです。

まとめ 環境が整っていけば「結果として」必ず見た目も良くなる

「見た目を良くすることは目的ではない」
とはいえ、上述したような観点で環境を整えていけば、「結果として」必ず見た目も良くなります

「目的を社員に浸透させる」というのは、本当に難しいことです。
毎日何度も唱和をしていたとしても、事例のように
「単に結果にしか過ぎないものが、いつの間にか目的になってしまっている」
ことは多々あります。

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