後継者が会社を継いだらまず環境整備に取り組むべき3つの理由【そうじの力で組織風土改革】

こんにちは。
そうじで組織と人を磨く、日本で唯一の研修会社 株式会社そうじの力
代表取締役・組織変革プロデューサーの小早祥一郎です。

先代から会社を継いだとき、あるいは、継ぐことが決まったときに、”まず”何をすべきでしょうか?
戦略立案? 新商品開発? 新市場開拓? 人事異動?
答えは、どれも「ノー」です。

今回は会社を継いだときにまずすべき2つのことと、その理由についてご説明します。

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会社を継いだときにまずすべき2つのこと

会社を継いだ時にすべき2つのこと、それは「現状把握(経営課題のそうじ)」と「環境整備(物理環境のそうじ)」です。

①経営課題のそうじ(整理・整頓)による、現状把握

私の尊敬する先輩に、企業再建コンサルタントをしているS氏という方がいます。
彼は若い頃に急死した叔父から会社を引き継ぎ、年商を8年間で5倍にした実績を持っています。
S氏曰く、会社を継いだときにまずすべきなのは「現状把握」。

  • 今、会社の状態がどうなっているのか。
  • 会社は利益が出ているのか?
  • 内部留保はどれくらいあるのか?
  • 逆に累積赤字はどのくらいなのか?
  • 借入金はどのくらいあるのか?
  • 主なお客様は誰か?
  • 商品構成はどうなっているのか?
  • 自社の強みと弱みは何か?
  • 社員の経歴や年齢、家族構成は?
  • 会社の土地建物、機械設備の状況はどうか?

などなど…。

まずは、これらの現状をしっかりと把握しなければ、次に打つ手も考えられないわけです。
いわば、経営課題のそうじ(整理整頓)と言えます。

②物理環境のそうじ(環境整備)

S氏によれば、会社を継いだときにすべきもうひとつのことは、「環境整備」だと言います。
環境整備とは、整理・整頓・清掃の活動をつうじて、企業組織を強くしていく取り組みのこと。

①はわかりますが、この②に関してはなかなかピンと来ない方も多いのではないでしょうか。
なぜ、会社を継いだときにこの環境整備をすべきなのでしょうか。

会社を継いだときに環境整備が必要な3つの理由

①現状がよくわかる

環境整備の具体的行動は、整理・整頓・清掃です。
整理とは、不要なものを捨てること。
整頓とは、必要なものを、取り出しやすくわかりやすく配置し、明記すること。
そして清掃は、掃いたり拭いたり磨いたりして、モノや場所が本来の役割を発揮できる状態を保つことです。

環境整備をすると、いろいろなことに気づきます。
倉庫に、見たこともないような商品が山積みになっていて、驚くことがあります。

過去に売れ残った商品かもしれません。

工場内の通路にいろいろな物が置かれていて邪魔なので、配置を変えようと思ったとします。
ベストな配置を案出するためには、製造作業がどのように行われているのかをじっくりと観察し、理解しなければなりません。

機械設備の油汚れを拭いていると、機械のあちらこちらから油漏れがあり、老朽化を実感するかもしれません。

事務所の床を雑巾がけしていると、床面に亀裂がたくさんあり、傷みが激しいことがわかるかもしれません。

商品棚の商品を一つひとつ拭いていると、わが社の売れ筋商品と、売れ残っている商品が理解できます。

トイレ掃除をしていて、便器の汚さにびっくりし、よく考えてみると、「わが社には掃除当番というものがない」ということに気づくかもしれません。

こんなふうにして、整理・整頓・清掃をしていると、実にいろいろなことがわかります。

  • 建屋や機械設備の状態。
  • 商品のラインアップ、在庫の状況。
  • 社員の動き方や意識の状態。

これらは、決算書には数字として現れていたり、報告書を通じて文字としては脳内に入っているかもしれません。
ですが、このように実地を見て、モノに対面しないと、こうした生の現実は見えてはきません。

つまり、環境整備をしないと「現状把握」しきれないのです。

②人心を掌握できる

環境整備は、整理・整頓・清掃だと言いました。
このうち、整理と整頓は、一人ではできません。
不要だと思われるものがあっても、社員の誰かが使っている可能性があります。
だから、整理をする際には、必ず、社員たちと話をすることになります

また、物の配置をより良くしようと思っても、実際にそれを使う現場の声を聴き、彼らと一緒にやらなければ、意味あるものにはなりません。
整頓する過程で、社員との協力関係を築くことが必須になります

こういうやり取りの中で、社員一人ひとりと接することで、お互いの理解を深めることができます。

一方の清掃は、一人でもできます。

  • 機械の油汚れを拭く。
  • 床の雑巾がけをする。
  • 廃棄物置場をホウキで掃く。
  • トイレ掃除をする。
  • 休憩室のテーブルを拭く。

いずれも、「汚れ仕事」です。
この汚れ仕事を、経営者(後継者)自らが黙々と取り組むのです。
そういった姿を、社員は見ています。
別に、見せるためにしているわけではありませんが、社員は見ているものです。

汚れ仕事を自ら取り組む人間は、他人から信頼されます

会社を継いだ(あるいは、継ぐことが決まった)ばかりの頃はまだ、社員たちも、新社長(後継者)の人物について、品定めをしています。

  • 先代と比べて、この人はどうなのか?
  • デキる人なのか、デキない人なのか?
  • やさしい人なのか?怖い人なのか?
  • 信頼できる人なのか?信頼できない人なのか?

こうしたことを、社員は見ています。
そして、汚れ仕事を自ら黙々と取り組んでいる人に対しては、少なくとも、悪い印象は抱かないでしょう。
最低限の信頼関係は結べる、と感じてもらえるのではないでしょうか。

今後、具体的な経営施策を打ち出していくにしても、こうした社員との信頼関係あってこそ、です。
それが、環境整備をつうじてできるのです。

③負の遺産を一掃できる

先ほど、「倉庫に、見たこともないような商品が山積みになっていて」と書きましたが、継いだ当初は、こういうことがよくあるものです。
これこそ、「負の遺産」です。

整理とは、不要なものを捨てること。
こうした、先代が捨てられなかったものを、処分しましょう。

もちろん商品であれば、たたき売りであれ何であれ、何らかの換金手段を考えるべきでしょう。
しかし、どんなに値を下げても、需要のないものは残念ながら売れません。
思い切って処分しましょう。

また会社内には、よく見てみると、不要なものがたくさんあります。
これらを処分することで、スペースが拡がり、より安全になり、効率が良くなり、快適になります。

加えて、整頓や清掃をすることで、各所が整ってピカピカになるのですから、「自分の代になって、より一層この会社を良くしよう」という意欲も増していくことでしょう。

まさに環境整備によって、負の遺産を一掃し、会社を「刷新」できるのです。

ただし、まだ先代が経営に関与している場合、在庫の処分などには注意が必要です
先代には先代の考え方がありますので、くれぐれも「勝手に処分する」ことだけはしないようにしましょう。

それでも「先送りにするのは良くない」と手を入れることを決めたのであれば、現状と自分の考えを説明した上で、進めていきましょう。

環境整備を進めるうえで気をつけるべきこと

環境整備は新たな設備投資が必要ないため、始めやすい取り組みではありますが、気を付けるべきポイントを押さえないと、社内の猛反発に遭うこともあります。

3つのポイントを押さえて進めていきましょう。

①無理に周りを巻き込もうとしない

上述したことと矛盾するように聞こえるかもしれませんが、「無理に周りを巻き込もうとする」のは禁物です。

環境整備は良いことだと、皆が思っているわけではありません。
また、大枠では環境整備に賛同しながらも、実際に自分が関わる事柄については、変化を嫌う、ということもあります。

なので、いきなり「この作業場の配置では効率が悪いので、変えよう」と言っても、反発が強く、現場の納得が得られない、ということは、よくあります。

社長に就任したからといって、すぐに皆が自分の指示に従うわけではありません。
少しずつ、信頼関係を築いていくしかないのです。

だから、まずは、自分ひとりで完結する範囲内で、環境整備を進めましょう。

もちろん、周りの協力が得られるのであれば、それに越したことはありませんが、抵抗や反発があるものに関しては、無理に進めないほうが無難です。

②自分の取り組みを誇示しない

自分ひとりで完結する範囲内で、と書きましたが、これを誇示するようなことも禁物です。

たとえば、トイレ掃除に黙々と取り組むとします。

ついつい、自分のやっていることを誇示したり、誰かに認めてもらいたくなるものですが、そうした途端に、嫌われます。
自分が掃除をする姿を見て社員がやることを期待していると、社員はそれと気づいて、離れていってしまいます。

先ほど、社長の姿勢を社員は見ている、と書きましたが、それはわざと「見せる」のではなく、自然と「見られている」ということです。

あくまでも環境整備は自分の仕事、ととらえて、取り組むのがよいでしょう。

③完璧を求めない

上記2項目にも通ずることですが、環境整備を進めるにあたっては、完璧を求めないことも大事です。

環境整備をやっていると、ついつい完璧を目指したくなります。
そして自分が取り組めば取り組むほど、他の人の「できていない」ところが目につくようになります。

ですが、環境整備に終わりはありません。
良くなったと思っても、次のステージがあり、それをクリアしても、また次のステージが待っています。
自分が社長に就任し、将来引退する日まで、環境整備は続くのです。

会社を継いだばかりの段階で、完璧を求めるのは、幼稚園児がいきなり大学入試に臨むようなもの。
大事なのは、どれだけ良くなったかの「結果」ではなく、取り組む「プロセス」です

まとめ

S氏は、「会社を継いだときにしていいのは、現状把握と環境整備だけ」と言います。
それだけ、環境整備には経営者の自力を強める作用がある、ということです。

先代のやり方に不満があったり、「親父は古い、もっとこうしたら良いのに」と、取り組みたいことも山ほどあることでしょう。
しかし、やるべき「環境整備」をすっ飛ばして、いきなり新たな戦略を打ち出したとしたら、どこかで結局壁にぶつかってしまうのです。

あなたが取り組みたいことに加え、ぜひ環境整備も一つの柱に加えてください。
やりたいこと(攻め)と、やるべきこと(守り)の両輪をしっかり回すことで、足腰強く踏ん張れる組織を作っていってほしいと願っています。

導入にあたり気になることがございましたら、どうぞお気軽にオンラインセミナーにご参加くださいね。

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