こんにちは。
そうじで組織と人を磨く、日本で唯一の研修会社 株式会社そうじの力
代表取締役・組織変革プロデューサーの小早祥一郎です。
環境整備にきちんと取り組んだかどうかを、どう評価するか、ということについては、色々な考え方があるでしょう。
特に明確な形で評価をしていない会社もあれば、「全員に取り組ませる」ために人事評価制度に組み込んでいる会社もあります。
例えば、「環境整備点検」というキーワードで話題となったビッグモーター社の場合。
毎月本社の役職員が店舗を巡回し、「項目通りにできているか」「できていない箇所はないか」という「減点方式」の評価制度を取り入れていました。
そしてその結果は人事考課にも影響し、場合によっては、減給や降格という、厳しい措置も取られたとか。
同社の例は極端だとしても、定期的に点検して、その結果を人事評価につなげることを是とする社長も少なくありません。
私は、企業における環境整備の目的は、「各人の自立性を育て、互いに協力し合う社風を構築すること」だと考えています。
その目的を鑑みた時、環境整備の取り組みを減点法で人事評価につなげることには賛同できません。
環境整備と評価について、私の考えを述べたいと思います。
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目次
環境整備と評価制度
人事評価制度とは、社員の能力、パフォーマンス、会社への貢献度などを数値化して点数をつけ、報酬や等級などの待遇に反映させる仕組みのことです。
環境整備の項目を反映させるためには、取り組みを数値化する必要があります。
そこで取り入れられがちなのが「減点方式」です。
環境整備における「減点方式」
環境整備における減点方式とは、どういうものでしょうか?
机や道具置場の状態、掲示物、モノの置き場・置き方など、ありとあらゆるものに細かく「あるべき状態」が設定されます。
それをすべて満たしている状態を100点として、評価者が「できていないこと」を見つけ、マイナス評価をつけていくことが減点方式です。
もちろん、新たに何か改善を行い、現場の作業効率が上がったともなれば、加点の評価をつけることもあるかもしれません。
しかし、減点方式が強固に働いている間は、なかなかそれは難しいでしょう。
なぜなら、新しいことにわざわざチャレンジせずとも、決められたことを決められたとおりに行っていれば、少なくとも減点はされないからです。
なぜ「減点方式」を採用してしまうのか
減点方式では、「決められたことを、指示通り正しく行うこと」が重要視されます。
これは、「できるだけ労力をかけずに、社員を経営者の意のままに従わせたい」という目的と、非常に相性がいいのです。
① 全員を強制的に参加させることができる
整理・整頓・清掃は、やり方が決まっていれば誰でもできます。
つまり、職位や職歴に関係なく、誰でも取り組め、結果を出せるという事。
これ自体は、なんら問題ではありません。
問題は、減点方式と合わさった時です。
環境整備を進める際、組織の中に抵抗を示す人も少なからずいることでしょう。
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評価制度に組み込まれると、人事考課に響くわけですから、当然彼らが「やらない」選択肢は消えます。
言わば、「誰もが必ず強制的にやらされる状態」が作り出されるのです。
② 評価者の負担が少ない
普段現場に来ない経営者が評価をしやすいというのも、減点方式が採用されやすい理由でしょう。
減点方式ではまず「あるべき姿」という「答え」が、評価者の手元にあります。
それを「今」満たしていない項目を見つけていくだけなので、普段の現場を見ていなくとも判断できるのです。
また、減点方式では、結果は数値化できます。
項目が決まっているため、比重のコントロールも自由自在です。
数字には評価者の主観も入らないため、点数付けも容易。
まさに、「かける労力を抑えて、社員を意のままに従わせたい」という目的に合致します。
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「最初は乗り気じゃなかったけれど、やってみたらやりがいがあり楽しかった」と前向きに考えが変わることもあるでしょう。
しかし、
- 活動がマンネリ化し、減点されないためだけに評価項目をこなすようになった
- 本業の方に余裕がなくなり、環境整備の時間も業務に捻出しないと回らなくなってしまった
- そもそも言われたことをこなせばマイナス評価はつかないため、その通りにやっている
など、機運が傾いてきたとき、その「強制力」が一気に負の方向に傾きます。
「悪い評価を避けるために、決められた項目にのみ取り組む」という強い動機付けとなってしまうのです。
こうして、環境整備に減点方式の評価制度が採用され、改善されないまま長期に運用された先に行きつくのが、「全体主義」の組織風土です。
上司の言うことには無条件で絶対服従。
周りと同じこと、決められたことをやる。
それが合法的なことか、倫理的なことか、お客様や地域のためになることかは関係ない…。
このような組織風土が、不正問題を引き起こした例がビッグモーター社の事例と言えます。
環境整備と評価についての考え方
以上を踏まえて、環境整備と評価については、以下のように考えることをご提案します。
①評価は業務そのもので
環境整備に熱心に取り組む社員は、一般的傾向として、業務そのものでも成績が良いことが多いようです。
デスクの上がグチャグチャに散らかっている社員は仕事が遅く、凡ミスが多いのに対して、整理整頓が習慣づいた社員は手際が良く、お客様の評判も良い、というのは、よく耳にすることです。
環境整備に熱心に取り組めば取り組むほど、業務の能力も向上していく(効率が上がる、ミスが少なくなる)ので、あえて環境整備そのもので評価しなくとも、業務の成績で評価すれば十分ではないでしょうか。
また、環境整備の取り組みにおいてリーダーシップを発揮した社員は、当然ながら普段の業務においてもリーダーシップを発揮するでしょうから、自然と職位も上がっていくことでしょう。
②環境整備とは「個人の生活を豊かにするもの」
環境整備は、単に、仕事をやりやすくするだけのものではありません。
家庭生活や趣味や教養においても、個々人のあり方を、より豊かにしてくれるものです。
たとえば、以前は家事を何もしなかった男性が、環境整備をきっかけに、家庭でも掃除や片づけをするようになったとします。当然、奥さんは、それを喜ぶでしょう。子どもたちは、その姿を見て、身の回りを整えることの大切さを学ぶかもしれません。
つまり、取り組んで得をするのは本人であり、取り組まなくて損をするのも本人。
ですから、あえて経営サイドが評価する必要はないのです。
③加点法で表彰を
それでも、どうしても「よく頑張った人に報いたい」という場合には、表彰を行うといいでしょう。
給与や賞与といった生活給が、評価によって増減すると、個人や家庭の生活に影響して、人心が荒れます。
特に、マイナス評価によっての減額や降格は、禍根を残します。
ですから、給与や賞与、手当などとは切り離し、加点法のみによって、頑張った人やグループを表彰するといいでしょう。
その際、少額ならば、金一封を授与するのもいいでしょう。
「少額」の目安ですが、一人当たりに換算して、1回の豪華な飲み代に相当するくらい、でしょうか。
グループ単位で表彰する場合、受賞したグループは、お祝いの飲み会で盛り上がることでしょう。
これならば、生活には影響せず、頑張った報いも受けられます。
まとめ
環境整備の取り組みに、直接的な人事評価を絡める必要はないと考えます。
大切なのは「なんのために、会社で環境整備に取り組むのか」。
目的がしっかりしていれば、自社なりの答えが出てくることでしょう。
もし、「加点式の評価を取り入れたいが、どのようにすればよいかわからない」とお困りでしたら、様々な支援先の事例をご紹介できますので、どうぞオンラインセミナーにご参加くださいね。
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