コンピュータ、ネットワークシステム機器の保守メンテナンス事業を行う、データライブ(株)。
創業から20年、ITサーバー第三者保守業界でトップシェアを走り続ける、社員数164名の会社です。
代表取締役社長の山田和人様に、お話を伺いました。
環境整備をはじめようと思ったのは、なぜですか?
弊社は割と小さい規模の会社です。
ですから、大きな会社や巨大資本は脅威なんですね。
それらに負けないためにはどうすればいいか。
「お金さえ投入すれば事業が真似されてしまう」というのはどうすれば防げるか。
それを考えた時に、長年時間をかけないと積み上がらないようなノウハウとか、社風とか、そういうものをひとつ武器に育てたいなと思ったんです。
いざ大きな会社、大きな資本が入ってきたときも、「そんなに簡単に負けないぞ」というものをつくりたい、そのための手段として環境整備に取り組もうと思いました。
弊社コンサルティングを導入するきっかけは何でしたか?
小早さんとはご縁があって、コンサルティングをお願いする前に経営計画合宿をご一緒させてもらっていたりしました。
その時に、小早さんの若い時の失敗談とか、考え方を聞かせていただいたんですね。
「単に知識として環境整備のノウハウを持っています」とかではなくて、「ご自身の体験から環境整備っていうものの良さをご理解されている」というところが、僕は非常に共感が持てて。
環境整備って生産性を上げたりとか、安全性が高まったりとかそういうのは勿論大事です。
けれどもその先、「それが最終的に個人にどう返ってくるか」というところ、ここが大切だと思うんですね。
そこまでお分かりになっている方なんだと、小早さんに環境整備のご指導をお願いすることにしました。
実践していく中で、なかなかうまくいかなかったことや、難しいと感じることはありましたか?
最初の3年間本当に苦労しました。
まずは導入時。
「環境整備やるぞ」と、環境整備委員会を7~8人で組成したときに、
「なんでこんな環境整備なんていう良くわからないことを始めるんですか?」
「わかるように説明してください」
って言われるんです。
まあ、気持ちはすごいわかるんです。
人間の器ってあるじゃないですか。キャパシティ。
自分のキャパシティの中のことであれば、説明すれば理解ができるんですよ。
でも、キャパシティ外のことっていうのは、「やって初めてわかること」なんですよね。
だから、一生懸命説明したところで、なんとなく頭ではわかるのかもしれないんですけど、肚に落ちていかない。
環境整備の効果って、まさに「やってみないとわからない」ものです。
でも皆さん、自分のキャパシティ外のこと、理解が及ばないものに対して踏み込むのが、最初すごく怖かったんだと思います。
まず、そこでの抵抗がすごく強かったです。
次は、展開時。
環境整備を進めるにあたり、折に触れ何回も「目的」を伝えました。
- 気づきを高める
- 創造性を高めてほしい
- いろんなアイディア、工夫をできるようになってほしい
という「環境整備の目的」ですね。
でも実際に、環境整備の取り組みを進めていけば進めていくほど、
「これはやっちゃだめ」
「あれはやっちゃだめ」
みたいな「ルール化」が進んでしまったんです。
「これは創造性が高まる取り組みになってないな」っていう、悪い意味でまったく自分が想像しなかった方向に進んでいってしまったりした時期がありました。
あとは、取り組みを社内に広げるのも苦労しました。
上司が環境整備に対して理解ができないと、やっぱり部下の皆さんもなかなか協力的になってもらえないんですね。
「創意工夫なんか実務の中でやればいいじゃないか」という意見もやはりここでもありましたし、それはそれで一理ある。
そして、なかなかそこに対して有効な説得がしづらいのが環境整備なんですよね。
なぜなら「やってみないとわからない」ところですから。
それをどのように解決していきましたか?
3年を経てひとつやり方を変えたんです。
何を変えたかというと、それまでは本社オフィスとか他のセンターとかも全社的にやってたんですけれども、まずは機材の備蓄倉庫、ここにフォーカスをして1点集中でやってみようと取り組み箇所を集中したんですね。
「5S」とか「整理整頓」の表示って、工場によく貼ってありますよね。
倉庫っていう場所、業務柄、工場のように環境整備がフィットしやすかったのでしょうね、
「生産性が上がるよね」
「安全性が上がるよね」
っていう視認しやすい形で、比較的スムーズに浸透していきました。
生産性で言えば、「もっとこうした方がモノが取りやすいじゃないか」という発想が、実際の業務上で、「これはシステムにこういう風に落とし込んだ方がグッと良くなるよね」というアイディアにつながりました。
安全性で言えば、「ここに網(ネット)をかけて、地震が起こっても物が落ちてこないようにしましょう」とか、そういう発想が出てくるようになった。
まず倉庫に集中したことで、「環境整備に取り組むと、会社が良くなる」ということを体感できた人が増えてきた。
そうやって、だんだんと「こういうことか」と実感できた人が増えてきて、活動の土壌ができてくるまでに3年。
ここまで本当に時間がかかったのが、苦労したところかなと。
会社や社員の変化を教えてください。
「生産性」や「安全性」の向上はもちろんなのですが、環境整備に携わった人たちの顔つきが変わってきています。
自信がついてくるというか、「自分たちはこれだけ創造することができるよ」っていう「マインド」が変わってきているなっていうのを感じています。
私自身も「捨てる」ということの大事さを実感しています。
ものを捨てることで自分の心の中のわだかまりも一緒に捨てていっている気がして。
すると、「ものを考える作業場」としての空間が、自分の中に出来上がる。
その「作業場」があることで、創造性の高いものが生み出せるっていうように、私は捉えているんですね。
それが他の皆さんにも体感として醸成されつつあると感じていて、その「マインドの変化」というのはすごい成果だなと。
小早の指導はいかがですか?
毎回指摘をいただきます(笑)。
小早先生が来られる日に向け、自分たちなりに知恵を絞って改善に取り組むわけです。
そして当日、僕らとしては「こんなに良くなりましたよ!」って自慢したい報告に対して、「うーん、もっとこうした方が良いんじゃないですかね」とか(笑)。
でもおかげで、すごく鍛えられる。
「さらに良くしていこう」っていう、いい意味で自分のアイディアがさらに良くなっていくんだっていう「マインド」が育ってきました。
環境整備の指導って、問題点を指摘し続けないといけない。
そして指摘された側っていうのは、自分を納得させるのに時間がかかったりするんですよね。
以前は、指摘されると自分自身を否定されたように感じて不貞腐れちゃうようなところがあったのですが、
「いやいや、これの指導によってもっと良くなっていくんだ」
「さらに良くしていこう」
っていう前向きな「マインド」が育ってきたんですね。
「強い組織」になっていく個人個人のメンタル、そういうのが、指導いただくことによって育まれてきているなって思います。
あとは「自分たちなりに一生懸命考えたんだけどどうにも答えが出ないぞ」とかいう行き詰ってしまった時なんかは、他社さんの実例をお出しいただけますので、いいご助言をいただけるなと思っています。
今後の展望をお聞かせください。
常々思っていることがあって、例えばトヨタ自動車さんのマインド、あの素晴らしいマインドって、現場から生まれていると思うんです。
ですから多分全然違うところからそこの工場に就職したり、お仕事をすると、自然と「トヨタのマインド」に変わっていく。
それが多分、他の部署さん、トヨタ全体のマインドに繋がっていっていると思うんです。
データライブにおいても、この倉庫、つまり現場で培われてくるマインドが、最終的に会社全体の社風というか、雰囲気を作っていけるようにしたいです。
ここからまずは全体に広めていって、最初に申し上げましたとおり、お金をつぎ込めば出来上がるもんじゃない、「我々にしかない土壌」を強固にしていきたいです。