兵庫県で創業100年以上、老舗の石材店である(株)森田石材店。
中兵庫で一番のお墓建立実績を誇り、3つの店舗を持つ、社員数36名の会社です。
三代目社長である、代表取締役 森田茂樹様に、お話を伺いました。
経営に整理整頓が必要だと思い始めたきっかけは、どんなところにあったのでしょうか?
大きく2つのきっかけがありました。
一つは、小さなミスによるクレームが多かったこと。
弊社は墓石の販売と葬祭業を営んでおります。
なので、お客様ご本人や、ご家族様がお亡くなりになった際は、ご葬儀やお墓を手配しております。
にも関わらず、亡くなった方のお名前で年賀状が行ったりとか、ニュースレターが行ったりということが、以前はあったんです。
半分呆れられたみたいな感じのクレームの電話もいただいたりもしました。
もう一つは、経営を見直さなければならないと思ったことです。
墓石って腐らないので、僕の感覚では「石」イコール「お金」。
「何かに加工すればお金になる」と思っていますから、以前はお金を払って石の端材を処分することにどうしても耐えられず、山の中に土地を買って、そこに大量の石を埋めていたんです。
自分の土地だから大丈夫だろうと思っていたのですが、ある日、県の方から呼び出しが来ました。
「石を埋めるのは不法投棄に該当するため、このままだと逮捕になりますよ」と。
改善計画を上げて、三か月以内にすべて処分して綺麗にしなさい、という指導が入りました。
そこで、創業以来初の赤字となるような、結構な費用を使ったんです。
きちんと計画的に処分をしておけば、すべて決算の経費にできてたものが、結局大きな経費となってのしかかってくる経験をして、
「ああ、経営ってこうじゃないな」
っていうのを感じていたんですね。
一つ一つのミスは小さなものだったりするものの、社内の色々なところをきちっとさせていかないと、今後もっとこんなことが大きくなる、行き詰まることが絶対あるなと思っていました。
弊社コンサルティングを導入するきっかけは何でしたか?
きっかけは、実践企業をこの目で見たことです。
同業の(株)西鶴の山本社長に別件で相談があって電話をしていた時に、
「ちょっとな、見てほしいことがあんねん。いっぺんおいでよ」
って言われて会社に伺ったんです。
その時に事務所の中を見て本当に驚きました。
コピー機や、パンフレットやら全部金額が貼ってあって、全社で情報共有ができるようにパソコンのフォルダがきちっと作ってあって。
「掃除がしやすいようにこんなことしているんだよ」という話を聞きながら、もう「すごすぎる」と。
「これだ、わが社には整理整頓が必要だ」って、ここで思ったんですね。
そこで、どうやって進めたんですか?と聞いて、小早先生を紹介してもらいました。
印象に残っている指導はありますか?
初回、先生と一緒に工場を巡回しました。
その時「ガラス割れているところ、全部交換してください」って言われたんです。
多分15枚くらいあったんじゃないかな。
「工場のガラスなんてヒビ入っとって当たり前」って、今までは何も気にならなかったんですよね。
でも、業者さんに頼んでガラスを変えてもらったときに、なんかちょっとすっきりしたんです。
自分の傷口を治したみたいに感じたというか。
印象に残ってますね。
実践していく中で、なかなかうまくいかなかったことや、難しいと感じることはありましたか?
最初は、「簡単に進めていけるだろう」と正直思っていました。
他の実践企業を見させていただいて、すぐに真似できるって思っていたんです。
ところがいざスタートすると、なかなか最初の一歩が進まない。
まずは、不要なものを処分する「整理」から始めるのですが、石の在庫、今思えば端材ですが、それがやっぱりどうしても捨てられない。
会長なんかは僕よりさらに「捨てられない」人でしたので、かなりの剣幕で「今すぐやめろ!」と言ってきましたね。
僕自身も捨てることに抵抗があり、社内の反発もあり、先生にも「捨てろ捨てろ」言われ、始めてから半年ちょっとが一番心が折れそうな時期でした。
ただ、常に思っていたのが、
「次の代に引き継いでいくときに、こんなぐちゃぐちゃでは誰も継いでくれへんやろう」
ということでした。
自分の番で、きちんとして、バトンを繋ぎたいと。
それと、今は昔と違って人がいない。
「見て覚えろ」ではなく、一から十まできちっと指導しなければならないし、「新人でもわかるようにする」ことは絶対に必要だと思っていたので、
「会社伸ばすためには、ここで折れるわけにはいかん」
っていうのが、心の中の支えでしたね。
それをどのように解決していきましたか?
先生が来るたび、
「これは要るものですか?要らないものですか?要らなければ、処分してください」
と言われるものですから、
「さすがに処分はできへんけれども、とりあえずここからは取っ払おう」
と、会社の外の石置き場の方に全部移動しました。
とりあえず移しただけだったんですけれども、そうやって石をどんどん動かしていったんです。
石だけはどうしても捨てられなかったので、先に事務所の整理整頓を進めていたんですね。
その中で「自分の引き出しの中を必要なモノだけにして、型抜きする」っていう作業が、実は割と楽しかったんです。
「あ、確かに、これよく使うし、これほんま使わんな」とか、単純なことなんだけれども、なんかそれが見えてきて。
自分の机でできると、他の場所やモノもだんだんとそういう目で見ることができるようになりました。
そうして一年半ぐらいして、石置き場見た時に、「うん、やっぱり要らんな」と思ったんです。
「もうこの際、一気にやってしまおう」と、岩の掘削機を借りてきて粉砕しました。
砕いた石も今度は細粒で使えますし、広い場所が今度確保できて、必要な物も仕分けしておくようにできたので、非常に使い勝手が良くなりました。
会社や社員の変化を教えてください。
石を砕くのを、見積もりから作業まで、全部技術部のS君にお願いしたんです。100万ちょっと使ったかな。
S君は、実は整理整頓にずっと反対していたんです。
でも、僕が作業を頼んでから「あ、本気やな。会社本気やな」と感じたみたいで。
それから彼は「やるなら徹底的にやりましょう」いうことで、力強く協力してくれるようになりました。
あとは本店に、新入社員が2人入ってくれて、積極的に取り組んでくれたんです。
若い人が頑張っていると応援したくなるし、ワイワイと参加できるようにもなりましたね。
仕事の面では、現場での仕事が綺麗に、丁寧になりました。
車をこすって謝りに行くとかも無くなりましたね。
一気に変化があった、というのではなく、コツコツ整理整頓して、ちょっとずつ「おお!良くなった!」と感じることが多いです。
正直ね、前が思い出せないです。
でも当時のことを思ったら、今すごく仕事をしやすくなったなあって感じています。
物理的にも、気持ちの面でもですね。
「自分たちだけでは出来なかったであろうことが出来た」ということはありますか?
新しいことにチャレンジするときに、「自分だけではできない」っていうのを若いときに経験したので、コンサルティングを入れることには抵抗はありませんでした。
ただ開始直後は、
「こういう風な収納にしたら良いですよ」
「担当は誰にしますか?」
「いつまでにここ、あなたは整理してくださいね」
みたいな感じで先生が手取り足取り指導してくれると思っていたんです。
ところが先生は、事例はいっぱい見せてくれるけど、「捨ててください」と言うだけで全然何もしてくれない(笑)。
「え?何もしてくれへんの?」っていう感覚でしたね、最初は。
それでも続けて1年半くらいで、当初積極的でなかった技術部が「よーし、ほならきれいにやりましょうや」って動き始めてくれたんです。
自分たちの職場でない事務所の中を、「今週はここ」「来週ここ」って、一緒に整理整頓するようになったときに、
「ああ、そうか、先生が言われていたのはこういうことか」
とわかったんです。
自分たちには、自分たちのやり方がある。ペースがある。
自分で考えてやってみて、またダメならまた改善していって、それを繰り返していくことで、自分で考えて実行する力がついてくる。
まさに「会社全体の会社教育」だなと、ものすごく感じますね。
「そうじの力」を導入をお考えの方にメッセージをお願いします。
「どうしようかな」って多分迷われている社長さんは、環境整備をしたいんです。絶対ね。
ただ、恐らく費用と時間の面で迷う部分があるんじゃないのかな。
コンサルティング費用の他に、処分費や修繕費、時間もすごくかかります(笑)。
でも、「思い立った時に始める」っていうことは、非常に大事だと僕は思います。
自分の勘を信じてみてください。
会社を今後伸ばしていく、存続させていく中で、環境整備は一番基礎になることだと実感しています。
どうぞチャレンジしてください。